デスティネーション・ストア | File 053:NEOTENY(東京都・蔵前)
2024.10.25

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 053:NEOTENY(東京都・蔵前)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。あまり古着のイメージが湧かない蔵前で、玩具の卸し問屋の跡地にオープンしたヴィンテージストア「NEOTENY」をFile 053ではフィーチャー。

Text Takaaki Miyake

ヴィンテージスペシャリストによるストア

NEOTENY

東京都内で古着の名店を巡るとなると渋谷や原宿、下北沢や高円寺などの西東京エリアを訪れる人が多いのでないだろうか?一方で人気のカフェやコーヒースタンド、センスの良いライフスタイルストアが集う東東京においては、古着の印象は抱くことは少ないかもしれない。

そんなイースト東京の中でも特に盛り上がりを見せる清澄白河からも近い蔵前へ、2023年12月に誕生したのが今回のヴィンテージストア「NEOTENY」だ。周辺のビルや風景とは明らかに異なる雰囲気を放ち、インテリアショップやセレクトショップにも見える外観から、大通りには面しているものの少し敷居の高さも感じさせる。

しかし一度その店内に足を踏み入れば、丁寧にセレクトされたヴィンテージウェアや雑貨が贅沢にゆったりと並び、しかもその一点一点が良質な状態やクオリティーの高いアイテムばかり。それもそのはず「NEOTENY」を運営するのは、10年以上にわたり国内の古着屋へアメリカやヨーロッパから集めた洋服の卸しを専門的に行う企業がその正体だった。

量から丁寧なセレクトに

NEOTENY

これまで古着店からのリクエストに応えるべく卸を長年手がけてきたにもかかわらず、新たにヴィンテージストアを始めたのには、経験やノウハウが蓄積してきたからこその理由があった。

「会社が成長するにつれて仕入れる量も卸す量も段々と増えていき、たとえ価値のある良いモノもでもその中の一着になることが多くなっていったんです。だったらもっと丁寧に一着一着をピックアップして、個性の強いお店を作りたいと思って社内の新業態としてスタートしたのが『NEOTENY』です」

そう説明するのはコンセプトから内装のデザインはもちろん、バイイングにいたるまでをディレクターとして手腕を発揮する丸山恭平さん。その「NEOTENY」には上質なヴィンテージが揃うだけでなく、それが広々としたスペースでゆっくりと楽しめるのも特徴的だ。

クライアントの古着屋と肩を並べないという理由からも選んだ、蔵前だからこそ可能な4フロアに分かれる店内にはヴィンテージと調和する、アートワークや植物、スピーカーなどのインテリアも「NEOTENY」らしさを作り出すのに一役買っている。

「僕は個人的にギュッと詰め込んだような古着屋も好きなのですが、実際に買い物を楽しんでもらうことを想像して見やすいフロア作りは意識をしています。一点一点をしっかりと選んでいるのでなおさらでした。

内装はキメキメにして、少し入りづらい雰囲気になったのかなと思っています。ですが店内ではアットホームな会話などを心がけているので『入りづらいけど、入ったらすごく良い居酒屋』みたいな感じですかね(笑)。そのギャップも楽しんでもらえたり、そういったお店を自分だけ知っている喜びを感じてもらえたりすれば嬉しいです」

さらにフロア毎で異なるお店に来たかのような新鮮さを味わえるよう、各階で統一感を演出しているのも「NEOTENY」のユニークな点だ。

シルエットこそこだわりを

NEOTENY

ヴィンテージストアと一口に言っても、バンドTシャツやアウトドア、ミリタリーやデニムなど、ラックからそのお店の得意とするジャンルや年代が分かることも稀ではない。「NEOTENY」ではそういった顕著なスタイルにフォーカスすることはなく、別のアングルからのこだわりをベースにした基準を持っている。

NEOTENY

「特に年代などにはこだわっていませんが、シルエットにはすごく気を遣っています。言葉で説明するのは難しいですが、あえて言うならジャストじゃないゆったりめですかね。学生時代からヒップホップやストリートのカルチャーが好きだったので、その影響だと思います」

NEOTENY

「それにヴィンテージのロックやパンクっぽい洋服だと、年齢を重ねると着にくくなる方も多いので、歳を問わずに楽しめたり、今の服とも自然にミックスしやすかったりするセレクトが中心になっていますね」

東東京一帯の火付け役に

NEOTENY

まもなく1年を迎える「NEOTENY」だが、オープン前に抱いていた蔵前の印象と実際に営業を始めてからは少し違った印象を抱き始めたという。

「近くのお店の人と話しても『蔵前って思ってるほどはあんまり人が来ないですよね』って口を揃えて言うんです。だけど良い街なのは確かだしユニークなお店もちゃんとあるので、何かやらないともったいないとダメだなとは強く感じています」

その想いからもバリスタやDJを呼んだストアイベントを初めて開催し、今後は蔵前だけでなく東東京をも盛り上げる役割を担う場所を目指していくという。

「人は少ないと言いましたが平日にスーツを着た方が毎週足を運んでくれたり、近くにお住まいのフォトグラファーの方など、このエリアだからこそ出会えたご縁にも感謝しています。周辺のお店と協力しながらこの辺り一体の魅力をもっと伝えていきたいですね」

DESTINATION STORES | File 53
ネオテニー | NEOTENY
東京都台東区蔵前2-3-4 ダイシンビル
営業時間:13:00〜21:00(月〜金)、12:00〜20:00(土日祝日)
https://www.instagram.com/neoteny2023/