短期連載 : NFTは新しいカルチャーである 中編
2022.09.22

和島“Wazzy”昭裕に聞くWeb3.0とNFT
中編  Web2.0的世界とWeb3.0的世界

NFT、Web3.0とファッションの関係を掘り下げる短期連載2回目。今回はWeb3.0とファッションNFTの現在、そしてこれからについて。




Interview & Text Yukihisa Takei
Photo Kiyotaka Hatanaka


和島“Wazzy”昭裕

1974年東京生まれ。KREATION,Inc.代表取締役(COO / FOUNDER)。アメリカ・アリゾナ州立大学建築学部を卒業後、サザビーリーグ、楽天を経て、2014年にファーフェッチジャパンの立ち上げに従事。HYPEBEAST JAPANの日本法人社長を務めたのち、2021年にKREATION,Inc.を立ち上げる。メンズファッションとNFTやWeb3.0に高い知見を持つ。

Twitter: @wazzykreation
Instagram: @wazzykreation



Web3.0の前にWeb2.5の世界が来る?

 「これからすべてがWeb3.0になる!」なんて盛んに言われていますが、そこについてはどうお考えですか?

: いや、そんなにすぐには来ないですよ(笑)。Web2.0の世界から3.0の世界に行く前に、Web2.5の世界があると思っています。今後10年か15年間、新旧のテクノロジーが並走する時代が始まっているんです。完全なWeb3.0に仕上がるのって、僕らが引退した後かもしれない(笑)。

 時間はかかると。ではそもそもWeb2.03.0の違いについて教えていただいてもいいですか。

: 簡単にお伝えすると、いくつかの大企業が個人情報を抱えてブラックボックス化しているのは中央集権型のWeb2.0的な考えです。

 それはGAFAGoogleAmazonFacebook=MetaApple)とか言われるところですね。

: そうです。自分達のところで取った顧客情報は渡さないという、ビジネス的には当たり前の思想です。逆にWeb3.0の方は個人情報を保有せずに共同資産にして、Web3.0というスペースの中に置く分散型の考え方です。またクリエイティブ制作でも同じように利益分配型がWeb3.0の基本で、その点では 「フォートナイト」がクリエイターを内部に入れて内部で利益を共有しているのはWeb2.0的な考え方です。

 囲い込みですね。

:中央集権って資本主義の最終形態と言われていて、トップ10パーセントはめちゃめちゃ儲かるけど、90%はいつまで経っても儲からないし、新しい芽も出てこない。だから「これからはWeb3.0だぜ!」って言っている人たちって、それに対するアンチの人たちです。ブロックチェーンやスマートコントラクトという技術改革や仮想通貨で資金を集めるNFTの使い方が具体的になってきたことでイノベーションが起こり、Web3.0の思想の後押しになった。

 ちょっとした革命なんですね。

: そうです。Web3.0の世界って会社に所属していなくても働けて、給料がもらえるような世界なので、より“個”が重要な時代になります。そしてWeb3.0では「個人情報は持たない」というベースに立つので、今度は匿名性が重要になってくるんです。匿名性が高い中で個を認識するツールとしてアバターの重要度が変わってきます。



匿名性が鍵になるWeb3.0の世界

― しかしなぜ匿名性が重要になるんでしょう。

W : 簡単に言えば、なりすまし、フィッシングとか詐欺もデジタル上ではめちゃくちゃ多いからです。自分の顔のセルフィーを撮って、本名を晒してツイッターで公開するのは、とてもリスクが高くなるのは明白ですよね。今後は個人が過去にSNSで投稿したデジタルタトゥーきっかけのトラブルやSNS上での誹謗中傷に関わる法令整備が進むにつれ、ますます匿名化が進むし、すでにその兆候は出てきていますよね。その匿名性の高い社会の中で、スマートコントラクトで唯一無二のものとして証明されるNFT (Non Fungible Token 非代替性トークン)の存在が重要になるわけです。

 本当に映画『マトリックス』の世界ですね。そっちでアバターがお金を稼いでくることもできる。

: そうですね。実際それはすでに始まっていて、今現在KREATIONのビジネスパートナーは世界のどこかに6人いるんですが、会ったこともなければ本名も知らない。そして仕事のギャランティはイーサリアムで分配しています。

https://ethereum.org/ja/

 すでにそうなっているんですね。

W : 実際GUCCIやBALENCIAGAのアメリカの一部の店舗は、イーサリアムで決済できるようになったし、Eコマースのカートシステムを提供しているShopifyとかも今後どんどん仮想通貨に対応していくんです。今あるファッションのコマースサイトも、決済機能だけ仮想通貨を使えることになれば、それでもWeb2.5なんです。



ファッションNFTの現在

 ファッションの世界でも、NFTWeb3.0について、なんとなく気になっているレベルの人は増えていますよね。

: ブランドがどんどん始めていますね。藤原ヒロシさんがマークゴンザレスとNFTを出したり、AMBUSH®BAPE®atmosHYPEBEASTとタッグを組んだりなど、事例は増えています。中でもAMBUSHのPOW!のNFTは成功事例の一つだと思います。

https://www.instagram.com/fujiwarahiroshi/

https://www.instagram.com/verbal_ambush/

 アイコニックなデザインを持っているブランドが先行していますね。逆に素材やシルエットにこだわっているブランドは、NFTとの親和性が低そうに感じます。

: そうですね。だからこれからファッションブランドにとって重要になってくるのはグラフィックアーティストとかイラストレーターとのマッシュアップです。そのブランドのムードやコミュニティをどうやって構築していくかに注目です。

 AMBUSH®はNFTWeb3.0への参入に成功したと言われていますよね。あれはリアルで出していた指輪をNFTで出したわけですが、その成功の理由はなんでしょう。

: コミュニティを温められていたということだと思います。コミュニティを作るというのはブランドの根幹じゃないですか。メンバーシップ、会員証みたいなものですね。AMBUSH®はメタバースを構築したりエクスクルーシブのイベントに入れたりできるなど、ファッションブランドとしてはこれでもかっていうくらいエンターテイメントを提供している。服を買うということ以外にファッションブランドとファンとの交流と増やしているAMBUSH®は、これからのファッションブランドのお手本になっていくと僕は思います。気付いたらそのブランドと交流していたという体験の連続がブランド体験になっていく。

― でも藤原ヒロシさんが言っていたように、「NFTは必要性のない人は買う必要がない」というのは変わらないわけですね。ただ、確かに今後は感覚が変わって、「このスニーカー買おうと思ったけど、NFTが付いてないならやめようかな」という気分になるかもしれない。

: はい。「リアルだけ買ってもしょうがない」ということになるかもしれないです。NIKEやスポーツブランドはきっとそこを狙っていますね。デジタルは劣化しないし、ずっと持っていられるし、ギフトもできるし、郵送の必要もない。そうやってカジュアルに所有して楽しめるのがNFTの本来の姿で、今の投機目的のものは、トライブが全然違うんです。“純粋にファッションが好きな人”と、新しいもの好きで、“それを持っているのが好きな人たち”に分かれているのが現状ですね。

(後編に続く)