HONEYEE.COM的個性派シティガイド
File 004：MOGI Folk Art （東京都・高円寺）

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を毎週紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 004は、長年BEAMS 「fennica」のバイイングやディレクションを手がけた二人が2022年10月に高円寺にオープンしたMOGI Folk Artをご紹介。

Text Yukihisa Takei
Photo Li Bowen

ロンドン帰りの熟練バイヤーによる、民藝とファッションの交差点

オーナーはBEAMS 「fennica」を手がけた二人

古着屋はかつて以上に増え、チェーン店よりも個人店や小さなショップが林立する街、東京・高円寺。「MOGI Fork Art」のオーナーであるテリー・エリスさんと北村恵子さんは、ここを「1980年代の原宿のような熱量がある街」と表現する。

ロンドンを拠点に1985年からBEAMSのロンドンオフィスとして海外のバイイングに携わり、BEAMS 「fennica」の立ち上げから約20年間ディレクションとバイイングを務めた二人は、日本の若い世代に民藝を浸透させ、ファッションともリンクさせたキーパーソンとしても知られている。その二人が2022年10月に高円寺に自身のショップ、「MOGI Fork Art」をオープンした。

ロンドンを拠点に活躍していた二人は頻繁に日本を訪れており、そのたびに高円寺に足を運んでいた。「高円寺はファッションやヴィンテージが好きな人、そしてこの時代でも変わらずモノが好きで、自分らしいモノを探している人がいる街」なので、自分たちが住み、店を開くならこの場所しかないと考えていたという。

それにしてもなぜロンドンでファッションのど真ん中にいた二人が、日本の民藝に惹かれたのか。

「私たちも30代になった頃には、ファッションも好きだけど、家の中のことも気になり始めていました。BEAMSのお客さんにもそういう人が増えているんじゃないかと考えて、会社にインテリアセクションの提案をしたんです。最初は北欧の家具などを仕入れていましたが、『日本の会社なのだから日本のものも扱おう』という流れの中で“民藝”に辿り着きました。バタフライスツールで海外でも知られていた、当時、日本民藝館の館長だった柳宗理さんに出会い、いろいろ教えていただいて、どんどんその世界に傾倒して行ったんです」

BEAMS 「fennica」では、日本各地に出向いて知り合った作家や窯の器や、民藝を中心とした雑貨を取り扱い、同時にその世界観とリンクするアパレルも展開。人気のレーベルとして現在も継続中だ。

しかし近年になってコロナの影響などでロンドンに戻るのが難しくなったことなどもあり、しばらく日本に暮らすことに決めた。今年の8月にBEAMSを退社し、10月に「MOGI」をオープンした。

“重さを気にしない方が、陶器との出会いが広がる”

「MOGI」に置いてあるのは日本の陶芸作家や窯による陶器類や民芸品、そして日本やイギリスのメーカーに別注したオリジナルのアパレル、そして厳選したミリタリーやアメカジの古着など。二人が世界観を構築したBEAMS 「fennica」にも近いようにも見えるが、実際は少し違うという。

「“民藝”はある程度量産されたものを指すのですが、ここに置いてあるのは、“民藝”の作家さんがもう少し踏み込んで作った物が多いです。高額なものもありますし、一点ものもあります。だからお店の名前もMOGI Folk “Craft”ではなく“Art”なんです。ここは私たち二人で開けたお店なので、私たちの責任で、より自由に好きなものを置いているという感じですね」

この「MOGI」が日本全国の作家や窯から仕入れた陶器類は、まさに二人の長年の信頼の賜物。どれも食器などに使うことを前提にしたものだが、「使うも飾るも、結果的に“使って”いるのだから、それはどちらでもいいんです」と北村さんは言う。

個人的に器に詳しくないこともあり、HONEYEE.COMの読者にどんな器がおすすめなのかを聞いたところ、テリーさんからはユニークなアドバイスをいただいた。

「どの器が好きかは人によって違うし、お店で会話をしながら選んでいただきたいので、これ、と限定しておすすめするのは控えたいと思います。あえて言うなら、選ぶ時に重さを気にされる方が結構いますが、『重さを基準にしない』方が、陶器との出会いは広がると思いますよ」

DESTINATION STORES | File 004

モギフォーク・アート | MOGI Folk Art

東京都杉並区高円寺南3-45-12
営業時間 : 12:00〜19:00（火・水曜休）

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